幹の会と株式会社リリックによるプロデュース公演の輝跡

第4回 仙台から青森へ


29日(火)
 
 今日は移動日。ホテルをチェックアウトし、仙台駅へ。
11:54発の東北新幹線で次の公演地「八戸」へ向かう。
ホテルから駅へ移動し、新幹線の改札を通ろうとしたら、仙台の演劇鑑賞会の皆さんが、「『王女メディア』ありがとう」とお手製のポスターを持って10人以上でお見送りに来てくださっている。
皆さん、昨日の舞台の感動がまだ冷めやらぬといった興奮の面持ちで、主演の平さんや「女たちの頭」の若松武史さん、「夫」の山口馬木也さんなどの主なキャストだけではなく、長い間に顔見知りになったスタッフの方々とも楽しそうに話している。
この一行が、次に仙台を訪れる日を約し、心から待っている皆さんの気持ちが手に取るように感じられる。
 
 13:04、八戸着。
携帯電話の温度計は2度となっているが、ここも暖かい。
駅の周りも、雪がわずかに残っているだけで、運転手さんの話でも今年は雪が少ないそうだ。
もともと八戸は海に近く、青森県の豪雪地帯のような大雪が降る場所ではないが、それでも例年より遥かに少なく、気温も暖かい日が続いているそうだ。
 
 今日は移動だけで、早めに各自がホテルへ入り、後は自由行動。新幹線で1時間少しとは言え、距離にすれば280キロを超える。
場合によっては同じ距離でもバス移動の場合もあり、次の公演地によっては移動だけで一日がかりになる場合も多い。
 

地方公演には「乗り打ち」と呼ばれるケースがある。
ハードな場合は、芝居が終わってから夜の間にバスで移動し、深夜に次の公演地に到着、就寝。
翌日の昼間に会場へ入り、夜からの公演を行い、終演後また次の公演地に移動、ということもある。今回は、キチンと「移動日」が設けられており、私は楽なタイミングで参加をさせてもらったようだ。
明日の八戸をはじめとする青森県内での公演を終えた後、一行は寒さを突いて北海道へ向かう。
北海道での公演地は函館・旭川・釧路・江別の4か所で、移動距離を考えると大変なことだ。
しかし、雪を蹴立てて進むバスの向こうに観客が楽しみに待っていてくれる。
それが、ハードな旅公演のモチベーションでもあるのだ。
 
この芝居は出演者が男性だけだが、「大人」ばかりなので、若い人たちの地方公演で感じる「合宿」のようなイメージはない。
仲良くしながらも相手を尊重し、必要以上にべたつかない。
皆さんに詳しく伺ったわけではないが、今日は各自がホテルでそれぞれの時間を持つようだ。
溜まった汚れ物を洗濯する人、休養や身体のメンテナンスに充てる人、時間が合えば話題の映画を観に行こうと思っている人…。私がホテルに籠もってこうして「旅日記」を書いているように、皆さん束の間のフリータイムを充実して過ごそうとしている。
夕方の天気予報によれば、ここ数日の東北地方の暖かさは、3月下旬並みだそうだ。
『王女メディア』が春を運んで来たのだろうか。
 
気が付いたら、外は暮れている。だんだん日が長くなっているとは言え、冬の夕暮れは早い。明日の舞台がどうであろうか、と期待を込めて、今日の分は終わりにしよう。