幹の会と株式会社リリックによるプロデュース公演の輝跡

第3回 仙台での再会


28日(月)1330 仙台・イズミティ21(仙台演劇鑑賞会)
 
 昼過ぎに仙台へ到着。
先月の会津若松とは打って変わった暖かさで、少し動くと汗をかくようだ。今日の最高気温は5℃。
ここも例年にない暖かさだそうで、ふだんなら最高気温が氷点下とのこと。
今日の公演会場は仙台駅から地下鉄・南北線で約15分、終点の「泉中央」駅のそばにある「イズミティ21」の大ホール。
収容人員1,450名の立派なホールで、今日は5日から始まった4日間の仙台公演の千秋楽に当たる。
 
ロビーには会員さんや事務局の方々手作りの歓迎ポスターが飾られている。
過去に平さんがこの会場で演じた『冬物語』や『冬のライオン』などのチラシに、ひと際大きな『王女メディア』のポスターを、手書きのメッセージが囲んでいる。
鑑賞会の事務局の方も、嬉しくて仕方がない、といった顔で迎えてくださる。
 
 昨年、人気グループ「嵐」のライブが行われたことからも判るが、仙台は東北では大きな会場を幾つも有し、人口も多いために、東北の他県に比較して文化的には恵まれた環境にある。
その分、「見慣れている」という印象が何とはなしに観客席に漂っている。
ただ、それが「悪ずれ」ではないのが嬉しい。
 今日は、カーテンコールで「ブラボー!」という声が聞こえた。
他にも、私のすぐ後ろの列で「オーラがあるわね」とか「平さんって若いわね」などの感想が聞こえる。東京の観客が素直ではない、と言ったら叱られそうだが、すぐには感想を言わない傾向が強いような気がする。
これも「東京人」の一種の見得だろうか。それを否定はしないが、こうして思ったことを率直に口にしてくれる観客はありがたいものだ。

 終演後、楽屋へ顔を出し、今日の宿舎へ。
今日はキャスト・スタッフ皆さんと一緒のホテルだ。
一息ついて、夕方から平さんと食事。実は、私が二人きりで面と向かって平さんと話し、食事をするのは初めてだ。
平さんとの貴重な時間に興奮し、嬉しさの余りに、本来話すべき話題を逸れて、すぐに芝居の話になってしまい、脱線どころか「暴走」してしまう。
経験豊富な平さんの芸談は楽しく、俳優座時代の千田是也の話、劇団四季で経験した浅利慶太さんとのエピソード、蜷川幸雄さんとの仕事などに、私がつい反応し、話は本題からどんどん逸れてしまう。
『王女メディア』も『近松心中物語』も初演から観ている芝居で、その話題になると自分の中にある感動や想い出が蘇ってくるのだ。
 
 食事を終え、ホテルまでの10数分間、ぶらぶら散歩をしながら、気が付くと『王女メディア』の話になっている。
私の芝居馬鹿ぶりに呆れておられるのだろうが、もうお付き合いいただくより仕方がない。
私は、芝居以外には話題がない、と言っても良いほどに偏った人間だ。気が付くと、もう3時間が過ぎている。
 
さっきまで2時間出ずっぱりの舞台を勤めていた平さんに、何と過酷なことを強いてしまったのだろうと反省しつつも、芝居の話題に満ち満ちた至福のひと時を噛み締めながら、宿舎へ戻った。